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  評価の基本10

 
   

51.コンピテンシーに死角あり

 
   

 高い業績を上げる人達の行動特性を「コンピテンシー」と言い、最近の人材開発・人事評価にはこのコンピテンシーを取り入れる企業が多くなってきている。
コンピテンシーをモデル化し、それを見習わせることで人材育成につなげようというものであり、基本的には、「優秀な行動が高い成果に結びつく」という考えである。

  これはこれで効果的であり、今後ますますこの考えを取り入れる会社が出てくるであろう。しかし、ここで注意しなくてはいけないことは、全般的に「優秀な行動」をしているにもかかわらず、ちょっとした「問題行動」が原因で「高い成果」に結びつかないことがあるということである。

  特に最近、成果主義や業績重視の考えが定着してきて、成果に直結する行動に対して焦点が当てられ、成果にはすぐには結びつきつかないが、長期的には非常に大事な行動や組織人としての基本的な行動については、若干おろそかになってきているようなところがある。しかし、これらも非常に大事なことであり、人材開発・人事評価にぜひ組み込む必要がある。

●逆コンピテンシー による減点評価が効果的 

 そこで必要になってくるのは、コンピテンシーの逆、すなわち「逆コンピテンシー」という考え方である。コンピテンシーが「優秀社員の行動特性」という意味でよい行動を取り上げるのであれば、「ダメ社員の行動特性」という意味でいけない行動を取り上げるのが「逆コンピテンシー」である。

  コンピテンシーは優秀社員を育成しようという考えであり、逆コンピテンシーはダメ社員を無くそうという考えである。

 長期的に大事な行動や組織人としての基本的な行動については、逆コンピテンシーで減点評価し、成果に直結する行動、例えばプレゼンターション力やタイムリーな決断など努力や経験により習熟していくものについてはコンピテンシーにより加点評価する、という風に併用する方が、人材開発や人事評価の実態によりあっているといえる。(表1を参照)

 また、「コンピテンシーおよび逆コンピテンシーを使った評価チェック表(表2)」をみてもらいたい。実際にチェックするとどちらがわかりやすいだろうか。今回取り上げた「チーム精神の発揮」のように、本人気持ち次第で行動できるものは「逆コンピテンシー」で判断した方がわかりやすいのである。また、いけない行動をはっきり「いけない」と表示することで、職場管理も明確に行えるようになるのである。

 参照 → 逆コンピテンシー

 



   

52.逆コンピテンシーの活用のメリット

 
   

● 逆コンピテンシーに注目して分かること

 「そんな当たり前のことはみんなできている。」「逆コンピテンシーに合致するダメ社員はわが社にはいない。」というご意見もあるかもしれないが、実際に使ってみると次のようなことがわかってくる。 有能で高い業績を上げている人達には、コンピテンシーだけでなくマイナスの行動特性もあることがあるということである。

  例えば、管理職の場合

  ・部下の意見や行動に対して常に否定的な対応をする
  ・日頃から部下の意欲を下げるような言動がある
  ・細かいことまでにいちいち口をはさみ部下に仕事を任せることができない などである。

 このマイナス行動(逆コンピテンシー)が機会損失に結びつき、本来の上がるはずの業績を上がらないように阻害しているのである。
 目に見える業績で安心するのではなく、このマイナス行動(逆コンピテンシー)を排除することで、飛躍的に業績を伸ばす可能性が出てくるのである。

● 職場管理の「しかる基準」に

 最近部下を叱れない管理者が増えてきている。これは、部下を叱る勇気がないということもあるが、もう一方でこんなことでいちいち部下を叱ってもいいものか、という戸惑いもあるように思える。そして、戸惑った場合は「心の広い上司」を演じようとして、つい見逃してしまい、結局は部下を叱れない甘い管理者になってしまうようである。  そのような事態に陥らないために、この逆コンピテンシーで「あってはならない行動」を明確にするのである。言い方を変えれば逆コンピテンシーは叱る基準であるとも言える。(そうするとコンピテンシーはほめる基準になる)

  この叱る基準「逆コンピテンシー」を明確にし、オープンにすることで「いけない行動」に対して、上司も叱りやすくなり、叱られた方も事前にわかっていることであるから、納得できるようになるのである。また、叱る基準「逆コンピテンシー」が明確になっているにもかかわらず、見逃しているようなことがあれば、その上司自身の評価に影響するようにし、勇気を持って叱る・ほめるが行える職場風土にすることができるのである。
  (「明らかに部下がいけない行動をしているのに叱らない」という内容を管理職の逆コンピテンシーに入れればよい。)

● 更なる業績向上が狙える

  これは、「逆コンピテンシーに注目して分かること」で説明したように、優秀な行動をしている人が高い業績を上げているからそれでよい、と考えるのではなく、もっと業績を上げるためにはどうするかという観点が必要である。高い業績を上げているから、「誰も文句を言わない」「多少のことは目をつぶる」「結果がすべてよ」という風潮が段々と出てきているが、本当にそれでいいのであろうか。
 よい面はよい面として認め評価するにしても、仮にいけない点があればそこを指摘して直していく必要がある。そして、それが更なる業績向上に結びついていくのである。「逆コンピテンシー」で「いけない行動」を明確にすることにより、高い業績を出している人に対しても、はっきりといけない点を指摘し、改善を促すことができるようになる。

 例えば、本人の業績はよいがそれによって周りが振り回され、全体として効率が落ちている。業績をたてに「全体最適より個人最適を主張する」など、業績に隠れた見えない部分が見えるようになり、それを改善することで、更なる業績向上が図れるようになるのである。

 

 
   

53.逆コンピテンシーの作成と使い方

 
   

● 逆コンピテンシーの作成のポイント

 逆コンピテンシーの作成は比較的簡単である。基本的には、自社でいけない行動を列挙して、それをまとめればすぐ完成する。そうはいっても、若干注意点があるので少し説明する。

  まず、逆コンピテンシーの項目は本人の気持ち次第で行動できる内容にすることである。
例えば、「上司からの指示命令に対してはっきりと返事をする」は本人の気持ち次第でできることであるが、「商品をわかりやすく説明する」はそれなりの経験や技術が必要である。技術や経験が必要なものはコンピテンシーで対応することとして、逆コンピテンシーでは「その気になればすぐできること」「気分次第でしないこと」に焦点を当てた方が効果的である。

 そう考えると、どこの会社も「いけない行動」は同じような内容になり、基本となるのは「規律性」「責任性」「協調性」「積極性」に関することになる。これらは人事考課の考課要素に入っている企業が多く、そのような企業では考課者に過去にC・Dと評価した具体的な事例を列挙して書いてもらうとよい。それらをまとめたものが、基本行動の「逆コンピテンシー」となる。
 また、人事考課の要素に入っていない場合は、それぞれの項目に該当するような「いけない行動」を出し合ってまとめるという方法で十分対応できる。

 また、この基本行動のほかに職種別の「あってはいけない行動」や管理職に対しての「いけない行動」も想定できる。
しかし、これらは単純に「本人の気持ち次第」での行動ではなく、それなりの技術や経験が必要なものも含まれる場合が多い。
そういう内容のものはコンピテンシーの考え方を取り入れて、優秀行動と対比して「いけない行動」を表示した方がわかりやすく、また、人材開発、人事評価にも活用しやすくなる。この場合の項目選定は、コンピテンシーと同じような形で項目を選定し、「優秀行動」だけでなく、ありそうな「いけない行動」を想定することで作成できる。

● 逆コンピテンシーの活用手順

 単純に行動チェックに使用することもできるが、人事考課と連動した方が効果的である。ただこの場合、上司が一方的に評価するのではなく、部下本人が自己チェックを行いそれをもとに上司と部下が面接で相談して決定した方がよい。 部下本人が自己チェックすることで、どのような点数をつけたかは別にして、一通りチェック内容を読むことで自己反省が促されるという効果がある。また、話し合いで評価が決まるということであれば、部下本人の納得性も高くなる。もちろん人事考課全体はこれだけで決まるわけではないので、この部分のウエイトを工夫すればある程度部下の言い分を取り入れても問題は生じない。上司の側も部下の日ごろの仕事振りを注意してみるようになり、面接も具体的な内容になりコミュニケーションもよくなってくる。

最後に  よいところを伸ばすことは大事なことである。しかし、それはその他の部分がある一定水準以上である場合に言えることである。組織人として、ある一定水準に達していなければ、まずそこを合格レベルに上げることが先決である。(もちろん、職種によっては一芸のみでよいということもあるが、・・・。)

 

 
   

54.基本行動の逆コンピテンシーの行動チェック表の例

 
   

 基本行動のチェックシート見本(pdfファイル)

 

 
   

55.管理行動チェック表の例

 
   

 管理行動チェックシート見本(pdfファイル)

 職種別の行動チェック表やより詳しい内容のもは「人事評価ツール全集」に収録されています。

 

 
    56.人事考課と処遇  
   

 1.人事考課と処遇は別物

 人事考課と「処遇のため評価区分」と区別して考えることが必要である。
人事考課は、部下の仕事ぶりや仕事の結果を考課し、よいところは認めて、さらに仕事に活用するようにし、いけない点は指導して、よい仕事をするように仕向けていくために行うものであり、処遇とは関係なく、管理監督者が当然行うべきことである。
  処遇のための評価区分とは、人事考課した結果を点数化し総合点を出して、その点数により、処遇上の評価段階を決める、ということである。

2.本末転倒

  「人材育成と会社の業績を上げるために人事考課を行い、その結果を処遇に活用する。」ということであり、「処遇に活用するために人事考課を行う」ことではないということをしっかり認識することが必要である。

3.失敗しないために

  人事考課と「処遇のための評価区分」を切り離して考えることで、管理ツールである人事考課が機能するのであり、「処遇のための人事考課」を行っている限り、人事考課は機能しないことになる。人事考課は「処遇を決める点数付け」ではないということを、しっかり認識すべきである。

4.目的は何?

 人事制度は「社員を成長させ業績を向上させる仕組み」である。
 ただ単に賃金や賞与を決めるためだけのものではない。
社員が生き生きとやる気をもって働けるような人事制度をつくり、運用していくことが、大切である。